「死期を悟った猫は、ひとを悲しませないよう飼い主の前から姿を消すというが、あれはどうなのだろうな」
「どう、って?」
「それは人間の勝手な解釈だろう? 猫が何を思ってそうしているのかなど当の猫でない者に解るわけがない」
「――――」
「もしかしたら、『死体』という己の無力な様(さま)を誰にも見せたくない、そう乞い願う最後の意地がそんな行動を取らせるのかも知れん」
もしも己がその猫ならば、悲しまれるのが嫌で姿を消すなど有り得ない。
無様を晒すくらいならいっそ――。
そう考えるに違いなかった。
執筆日不明/2018.11.15 微修正
・そうして雲隠れした猫の居どころを嗅ぎあてて、無様を曝いてでも独りでなど逝かせはしないのが京という男