「ンなところで何やってんだ、あんた」
「おー、村越ぃー。あれ見てみー」
間延びした声の主・達海の指さす先、駐車場へとつづく通路の向こう、陽のあたる場所に後藤GMと緑川の姿がある。
何を話しているものか、声までは聞こえないが、肩や背に互いの手が触れたり離れたり、楽しげに笑い合っている様子はよく見えた。
さながら大型犬二頭のじゃれあいだ。
「⋯⋯なんというか、まあ⋯⋯」
「な?」
いつまでも見ていたいような、いっそ混ざってしまいたいような。
のどかというか、ほほえましいというか。そこだけ一足先に春が来たような。そんな。
やがて。
先に行動を起こしたのは村越だった。
はあぁーっ、と深く長いため息をひとつつくと、引かれる後ろ髪を振り切って最初の一歩を踏み出す。
足音に気付いた緑川が先に横顔を見せ、続いて後藤が振り返る。
「お、村越」
どしたー? 緊張感のかけらもない緑川の声に肩を落としつつ、村越は隣に並ぶ位置まで近付くと無言で男の首へガシリと片腕を回した。そうして男の身体を引きずるように、そのまま駐車場へと歩きだす。
「お、おい、村越!?」
何があった、どうした、後藤さん失礼します! あ、達海さんもー!! 耳元で綴られる言葉の数々は聴かぬふりでずんずん歩く。
後で理由を説明しろよ、と諦めたような、しょうがねえなあと呆れたような、そんな声音に狭量な己を許されているのだと教えられて。
独占したくなったのだと素直に白状すれば、この男はどんな顔をするのだろうか。
2012.02.24 終/2021.06.19 微修正
・今日の東京はとてもあたたかだったので⋯