・先生の膝まくら(文豪先生と担当くん番外)



「癒されたい⋯⋯」
 恨みの籠った声で猿飛が言う。編集部内のスケジュールに関し、仔細までは把握していない片倉だが、同居人であるところの彼が現在デスマーチ状態に置かれていることは知っている。
「とらでも撫でておくか?」
 探して来てやろうか、と提案するのへ、
「⋯⋯んー、それも抗い難い誘惑だけど⋯⋯」
 休日出勤したときのスーツ姿のまま倒れ伏し居間の畳に懐いていた男はむくりと上体を起こした。何をするのかと見遣っていれば、卓袱台の前に座る片倉のかたわらまで匍匐前進で這い寄って来、
「いまは先生の膝の方が効くと思うんだよね⋯⋯」
と、言い終わらぬうちに、ぺたりと腿の上へ頬を乗せた。






了 2012.05.22



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2012.05.22のmemoより転載